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楽しくわかるニッポン通訳案内--No.8
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先日、昨年度の通訳ガイド試験合格者を対象とした新人研修会に出席した。その席で私が駆け出しのころの体験を語ることになり、英語落語のことについて話した。 英語落語というと、80年代になってから故桂枝雀師匠が始めたことで知られるが、私はガイドとしてのデビュー間もない70年代の後半からやっていた。「枝雀より早く始めた」というのがひそかに自慢に思っていることである。ただし、あちらはちゃんとした高座が舞台だったが、私の場合は観光バスに揺られながらだった。 通訳ガイドの仕事は、四六時中、何かを話す商売だ。ところが、駆け出しのころはすぐに話すネタが尽きてしまう。日光や箱根の山の中をバスで走行中、Oh, beautiful!などと繰り返してばかりいるわけにはいかない。 そこで、どんな山奥でも通用する話は何かと考えたのが英語落語だった。これなら全国どこに行っても場を持たせることができる。 「落語」を一言で言うと comic monodrama(独演漫談)や one-man talk show(1人で演じるトークショー) のようになる。 |
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と紹介するのもいいだろう。アメリカのstand-up comedy(立って行う独演漫談)をもじった説明というわけ。日本に歌舞伎や能があることは知っていても、お笑いの伝統芸である落語については、ほとんど誰も知らない。アメリカ人に300年以上も続いていると話すと、一様にびっくりする。彼らの国の歴史よりも古いわけだ。
ときたま、アメリカン・ジョークを語ることもあるが、英語落語を披露したほうが圧倒的に喜んでもらえる。江戸時代の殿様と家来の古典的な話も、外国人には新鮮なジョークとして聞いてもらえるからだ。、 |
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落語の演目は寄席だと、たいてい15分〜30分くらいのものが多い。長いものは1時間近く演じられることがある。ところが、私の英語落語では、1話がせいぜい4、5分といったところ。英米人になじみのある西洋ジョーク並の長さにしたわけだ。外国人相手にバスの中で演じるにはこれがぐらいがちょうどいい。これなら途中で飽きられる心配がない。
プロの落語家は扇子(folding fan)や手ぬぐい(hand towl)を小道具に使うが、車中の私はマイクが手から離せない。したがって、私の落語は客が車窓に広がる景色をぼんやり眺めながら、耳で聞いて楽しんでもらうためのものである。 落語には江戸の町人言葉がたくさん出てくる。なるべく歯切れのいい会話になるように、自分で口にしてみて調子のいいセリフになるように心がけた。 「芝浜」という話では、主人公は長いあいだ禁酒をしていた魚屋の留さん。久しぶりに女房に熱燗をつけてもらって |
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などと言ったりする。
「後生鰻」には、金離れのいいご隠居さんを見かけたウナギ屋の主人が、と言ったりする。 |
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のように形容するのが面白い。
また、「船徳」ではにわか船頭になった若旦那の徳さんの漕ぐ舟が川の真ん中でグルグル回ってしまい、 |
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などと客に嫌みを言われる場面がある。こうしたgag(ギャグ)は、落語では「くすぐり」と呼ばれているものだ。
落語には日本独特の食べ物がたくさん出てくる。話のリズムが悪くなるので、あまり長い英訳は不適当。したがって、tofuやsashimiのようにそのまま通じる単語は助かる。 「まんじゅうこわい」の「まんじゅう」はいつもなら、a bun stuffed with sweet bean paste(甘いアンコが詰まった菓子)のように説明しているが、落語の中では、bean cake(アズキの菓子)と縮めて話している。ちなみに、イタリア人相手に「ピザこわい」でやったこともある。 「時そば」では、そばをズルズルと音を立てて食べる場面が出てくる。欧米では悪いマナーとされているので、落語を演じる前に |
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のような説明をしておくとよい。
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先日の新人研修会では、英語落語のデモンストレーションとして、「気の長短」をやってみた。これは比較的簡単に演じられる。すこぶる気の長い長さんと、むやみに短気な短七の掛け合いで成り立っている話だ。長さんのセリフはすごく間延びした口調にして、短七は早口でやるようにするのがコツ。
長さんが要領の得ない話をしたあと、 |
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と言うと、短七が
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などと応じるところでは必ず笑いが取れる。この研修会でも無事成功した。
英語落語のおかしさは、国際的に十分通じるものを持っている。知ったかぶりをしたり、強がりを言ったり、お金に目がくらんだり、ものをケチったり……。私のHPに「英語落語」のコーナーがあるので、ぜひ何かネタを覚えて、外国人の前で披露してはいかが? |
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のように言われ、それが快感になれば、ついトリコになってしまうこと請け合いである。
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