テレビ、ラジオは一部の限られた者によって制作され発信されるものであることは、過去数十年にわたって社会の常識でした。しかし20世紀末にそれが音をたてて崩れつつあり、もっぱら受信者であった私たちがなんと発信者になろうとしています。街頭に多くの人が集まり1台のラジオ、1台のテレビに夢中になった時代からは想像もできない市民革命が起こっています。
マスメディアと呼ばれているラジオ、テレビ、新聞は 100万人が60%満足するコンテンツは提供しているでしょうが、1万人が 100%の満足度を得られるものを提供できているとは言い難いです。例えば夜8時から10時の時間帯の多くは、10代後半から30代前半の層をターゲットにした恋愛ドラマかお笑い番組ばかりで、30代後半のオッサンにとっては満足を得られる番組は数少ないのが現状です。その時間になればどうするかと言えば、昔であれば本に手を伸ばしていましたが、今はインターネットかコミュニティー放送にシフトします。
社会の多文化・多民族化が進む中で、既存のマスメディアに満足できていないのはオッサンだけでなく、言葉の壁がある外国人はもちろんのこと、おじいさん、おばあさんもきっと同じことを思っているのでしょうね。
私が運営に携わっている「FMわぃわぃ」というラジオ局は、阪神・淡路大震災の直後、言葉の壁で情報がいき渡らなかった外国人に震災情報を届けようと、市民自らの手で立ち上げた放送局で、今も8言語で放送をしています。毎晩、テレビで若者向けの恋愛ドラマが始まる頃になると、神戸の外国人の何割かはFMわぃわぃにチューニングを合わせ母語による番組に耳を傾けています。また、週1回の沖縄・奄美の島唄の番組には、奄美出身の独り暮らしのおじいさんがラジオを持って近くまで聴きにきます。それぞれの番組はインターネットを通じて世界中に発信されており、島唄の番組を楽しみにしているのは神戸のオジイサンだけでなく、アメリカやブラジルに住む沖縄出身のオジサンたちも週1回の番組をインターネットを通して聞いています。また奄美大島の地元新聞のラジオ欄には毎週の番組予告が載っています。神戸の小さなラジオ局が放送する番組を通して何千キロも離れたところに住む沖縄・奄美の人がつながっていくのです。未完成ではありますが、新しい市民メディア像の原型がそこにあるような気がします。
生活が多様化した今、BS放送、CS放送、ケーブルテレビ、コミュニティー放送、インターネットなど多チャンネル化はますます進み、一部の者の手にあった番組が、市民の手に渡るようになってきています。極端なことを言えば、パソコンとデジタルビデオさえあればインターネットテレビ局が開設でき、世界中に番組を配信することだってできてしまいます。市民社会づくりに向けてその効果的な活用法が問われているような気がします。
Think Global, Act Local !