はじめに
四大文明はすべて河川流域で発祥し、成熟した末に、人間の知恵の限界から衰退した。いま身近な自然環境を保全する市民活動(NPO)が流域単位でネットワークを組み始めているので、流域からの発想の展開例をご紹介したい。現代文明の滅亡を避けなければ。
1.流域論
1996年11月第14回ナショナル・トラスト全国大会シンポジウムにて、TR(鶴見川流域)ネットワークと、小網代の森を守る会の紹介とコーディネーターを引き受けて下さった慶応大学生物学教室の岸由二教授から、生きものの賑いをみつめるたおやかな自然へまなざしを向け、自然を愛おしいとおもい、自然と友達になれるから、是非、皆で川へいこう、そして、上流までさかのぼっていこう、時には丘陵へあがって景色を見渡そうという呼びかけがなされた。
少し歩こう。すると次々と身近な自然を自分たちの力で保全し、なごやかにつきあっている仲間に出会うはず。そしたら手を組もう。できたら、丘陵や緑の帯がとぎれないように、仲間たちが守りたいと思っている自然の拠点をつないでいこう、と。
アカテガニの棲む三浦半島の小網代の森は、ひとまとまりの完結した集水域生態系(自然域)であることを自然保護のイメージ戦略として、政策決定者の心をひらき、共感者を増やしている。鶴見川流域をそのかたちからイルカ・ネット、バクの流域と呼び、インターネットで流域の魅力を発信し、人々の関心を喚起するとともに、行政の中でも建設省河川局がもっとも流域の管理にかかわっているので、自然系の護岸を復元するために働きかければ効果があると、対立ではない根強い関係づくりを続けている。
源流から干潟へと続く「流域」という単位をひとびとが当たり前に認識できるようにと。足もとの自然への共感から育まれた地球への確かなまなざしが暖かいのである。
2.荒川流域ネットワーク
埼玉県内に源流を持つ唯一の河川、荒川。この流域の各地に様々な市民活動をするNPO団体があり、それぞれの主張と活動を展開している人々が年に2--3回実行委員会をつくって「清流よ、よみがえれ!」をキャッチフレーズに荒川流域でネットワークをつくった。
私達の母なる荒川でもう一度子どもたちが水遊びができるようにしよう。荒川には昔、多様な生きものがいた。その中で、ほとんど絶滅の危機に瀕していて、なぜかレッドデータブックに載っていないのがミズガキ。ミズガキを荒川から追い出したのは誰だ??? ……ということで、一度一斉に荒川の水質調査をしてみようと、95年10月1日に28団体が170 地点、96年9月8日、40団体 230地点で水辺の水質を簡易パックテストで調べた。犯人は、家庭雑排水。
そこで、96年10月のシンポジウムテーマは『あなたの家も水源地』として話し合った。97年6月には、荒川の上流から下流まで、そして、多摩川流域の人々ともあわせて一斉に水質調査をし、データを集約する予定で、97実行委員会が2月にスタートする。
ゆくゆくは、関東の利根川、荒川、多摩川、鶴見川、江戸川などの河川流域全体を考える人々との交流、情報交換、責任あるADVOCACY NPOとして調査研究がスタートすると素晴らしいなと考えている。