プロップ・ステーション(略称プロップ)はコンピュータとコンピュータネットワークを活用して、チャレンジド(challenged:障害を持つ人を表す新しい米語)の自立と社会参加、特に就労の促進を目指すNPO(非営利市民組織)です。プロップとは「支え合い」を意味する言葉で、障害を持つ人たちを支えながら、障害を持つ人たちも支える側にまわれることを目標としています。
コンピュータを活動の中心に据えたのは、プロップの設立にあたり、重度、重症といわれる全国のチャレンジドを対象に行ったアンケートがきっかけとなりました。
そのアンケートでは「就労や社会参加への意欲の有無」のほか、「自分たちが社会進出していくときに、何があなたの武器になると思いますか?」という質問に、なんと8割が「コンピュータ」という回答でした。ベッドの上で寝たきりの方から「実は独学で勉強しているんです」というものもありました。でも残念なことにきちんと系統立てて習う場所がない、自分の知識や技術を評価してくれる人がいない。また評価されたとしても、それを活かす職場がない。幸い職があっても通勤できないのでなんとか在宅で仕事ができないだろうか……といった声が高かったのです。 私は多くのチャレンジドが仕事に対してこれだけ強い意欲を持っていることにカルチャーショックを受け、このコンピュータというものを柱に、チャレンジドの就労を阻む幾重もの壁を取り払ってみようと決意しました。
1991年、バブルがはじけ、不況の嵐が街を吹き荒れ始めましたが「自立」を考える上で「就労」の問題は欠かせないという思いも強く、さらにアンケートの結果に勇気づけられたこともあり、コンピュータ技術を身に付け、景気が好転したとき、すかさずその技術を就労に活かすことができたら素晴らしいなと考えるようになりました。
91年5月「チャレンジドを納税者にできる日本」をスローガンに、プロップを設立しました。最初の事業は「チャレンジドを対象にするコンピュータセミナー」の開催。新聞の募集記事を見て、なんと30名の技術者がボランティアとして集まって下さいました。技術者もまた、不確実な時代の中で、自分の技術を社会的に活かす道を模索していたことを知りました。
5年を経過した現在、チャレンジドとコンピュータを結びつける活動団体は全国に数え切れないほど生まれ、障害を持っている人たちのパソコン通信網も50近い数になっています。こうした社会の流れの中で、多くの企業、研究者、技術ボランティアたちの支援と協力により、コンピュータセミナーを継続し、チャレンジド技術者を生み出してきました。
90年12月から、野村総合研究所と「インターネットを活用した在宅勤務(リモートワーキング)の共同実験」を行っています。インターネットの活用により、チャレンジドと企業の双方にメリットのある雇用形態が生み出せるのかを明らかにすることを目的としたプロジェクトです。ここでもチャレンジドと野村総研の担当者は最初に顔を合わせただけで、インターネット上でスムーズに仕事が進められています。この実験が多数のメディアで取り上げられたこともあり、企業の在宅雇用への関心は高まりつつあります。
「インターネット」という言葉が一般新聞紙上に出ない日はないという昨今ですが、まだまだコンピュータアレルギーの人が多く、自分の生活に取り入れているのはごくわずかというのが現状です。つまり、インターネットビジネスにおいては「国民の大半がチャレンジド」だといっても過言ではありません。
そのことは重度のチャレンジドや、在宅で仕事をすることが、その人にとって最も効率の良い状態である難病の人たちなどが、日本の労働史上初めて一般の人と同じスタートラインに立てるビジネスが誕生したということを意味します。そして今、インターネットをチャレンジドの在宅勤務のための最良の「道具」と考え「行政の支援策を」と訴えています。また、このチャンスを多くのチャレンジドが掴めるようにすることが、多くの「納税者」を生み出すことになるのです。
世の中は加速度的に動いています。行政のしてくれるのを待つだけでは時代遅れになってしまいます。私たち自身の手で、世の中を動かしていくという気持ちを持つことが大切だと思います。