自治体の「観光情報提供システム」が流行っている。全国各地で50近くのシステムがすでに運用されているという。しかし、その多くはシステム運用者自身も認めるほどの“停滞”ぶりだとのことだ。運輸省もパソコン通信を利用した観光情報提供を始めると言う。さてさて……。
レジャー・サービス産業は、情報技術や情報システムの導入に関しては先駆け的な業界であり、多大な効果を上げている業界だ。オンライン系ネットワークを商用的に利用したシステムとして日本で最初のものが国鉄のみどりの窓口のシステムであり、その後の同システムの発展により、今では全国ほとんどの地域で即座に指定券の購入ができるようになった。大変なサービスの向上である。
ホテルの予約システムや航空業界のCRSも利用者に快適なサービスを提供する。列車や飛行機のサービスは、安全かつ快適に目的地に人を運ぶことはもちろんだが、利用者の側からすると、予約時や乗降時の快適さや利便性もサービスのうちである。ホテルも同様、宿泊している間だけがサービスの対象ではない。ある時、出張で大手チェーンのビジネスホテルに宿泊していたら、地元の人から「新しくてもう少し安いホテルが地元にありますよ」と言われた。そのホテルの存在は知っていたのだが、長距離電話をかけて苛々するよりも、東京の予約センターからオンラインで予約を入れてもらった方が快適だ。空いているかどうかやルームタイプの確認などで少々手間取っていれば、電話代で差額が出てしまうことすらある。情報システムが付加価値を提供してきた業界でもある。
レジャー・サービス産業がこれまで取り組んできた情報システムは、エンドユーザーに直接利用されるものではないものが多かった。オペレータ(=プロ)が介在し、客の反応をみながら(感じながら)操作する。目的もニーズも明確なものが多い。だからシステムは十分にその能力を発揮してきた。
ところが、件の観光情報提供システムは、エンドユーザーが対象である。観光の目的や行動が実に多種多様な人たちである。当然、観光情報と一口に言っても、求める情報の内容は千差万別。しかも、どのような観光行動をとるかによって、また、一連の観光行動の中でどの状態にいるかによって、同じ人でも必要とする情報やアクセスする情報メディアが異なる。パソコン通信などのネットワーク系メディアだけがメディアではない。(むしろ、ネットワーク系メディアが有用な場合は少ない。)最近、大河ドラマの舞台ともなったある県でも観光情報提供システムを計画しているという。システムの技術的な内容はともかく、利用者の観光行動や情報ニーズを捉えた上でのシステム構築といった考え方微塵もないのに驚いた。しつこくアドバイスしたのだがあああ聞く耳持たず。「ともかく作ればいい」ということらしい。
情報技術の進歩したいま、(技術的な)システムの構築は簡単だ。しかし、利用者を見据えなければうまくいくはずがない。消費者の目はますます厳しくなっている。民間企業はその声を聞くことに必死だ。消費者の観光行動の変化と観光情報やそのアクセス手段に対するニーズの変化を捉え、(社会的・人的なものも含めた)システムをつくっていくことが肝腎なのだが……。